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1970年代の中頃から80年代の初めに掛けて、
合衆国西海岸都市を中心に採用された調光卓に、
プリセットフェーダー20~30本位の面を、
丸ごと脱着するシステムがありました。
多段式プリセット操作卓が使われるようになると、
早い場面転換が出来るようになり、
照明デザインの考え方として、
より早い転換を競うようになります。
転換を早くするには、素早くフェーダーを組み替えるか、
段数を多くするかですが、
手間やコスト、スペースの制約から、
プリセット面をカセットのように取っ替え引っ返するアイディアが
生まれたものと思われます。
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このようにすれば、
あらかじめプリセットフェーダーを何段でも組んでおけます。
一旦組んだフェーダーが容易にずれないように、
フェーダーの動きは堅めになっています。
調光卓の周辺には、
このカセットを収納する棚や引き出しが用意されています。
さて、実際に使ってみるとどうでしょうか?
正直なところ、あまり快適とは言えませんでした。
何故でしょうか?
まず、カセットのフェーダーにばらつきがあり、
同じ数値にセットしても出力に微妙な違いがあったり、
セットする段によっても違いが出てしまいます。
また、カセットの収まり、かみ合いも上等とは言えず、
セットする情況によっては、
普通のプリセット卓のフェーダーをその都度上げる方が早かったりしました。
それでも、この考え方の優れている点を否定出来ません。
新しいアイディアを実際に作ってしまう積極果敢さも評価出来ます。
アメリカ人のとても良いところだと思います。
まず、このような、
ハードウエア・メモリーとでも呼べそうなアイディアがあって、
続いて開発された、メモリー付き調光卓、
パソコン制御操作卓へと収束されていくのですが、
その間にも、いろいろな考えに基づく、
いろいろな方式のメモリー卓が作られました。
![](https://hinix.com/wp-content/uploads/2022/11/スクリーンショット-2022-11-26-124057.jpg)
ともすると我が国の調光卓が右へならえ的であるのに対して、
この時期の米国では、
劇場ごとに全く違う操作系を持った調光卓が採用されていました。
下見、打ち合わせの段階で、
その劇場独自の考え方、操作システムを
いかに早く理解し、
自分のプランに適合させるかが勝負でした。
また、その殆どは、誤動作が当たり前、バグだらけという情況で、
本番中、まるで「モグラたたき」をしているような緊張感を味わいました。
それでも、このアメリカ人の果」敢な挑戦に感動を覚えました。
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丁度、NASAの予算が削減されて、
多くのコンピュータ技師が世に放たれた時期で、
このことも関係しているのではないかと推測しています。
今日、パソコン制御の調光卓が当たり前に運用されるようになっていますが、
その過程に於いて、
先覚者が多大な犠牲を払いながら、
非難、攻撃をかいくぐり、
果敢に挑み続けた結果であることを、
心の片隅に置いておくのも悪くないと思います。